Fahrenheit -華氏- Ⅲ
14時半―――
俺は腕時計を見ながら
“了解です”とだけ短く返事をした。
ちょうど良かった。こっちも『話したい事』があったし―――
瑠華と佐々木が昼休憩に入り、俺はわざと時間をちょっとずらして昼休憩に入った。
別段珍しいことでもない。打ち合わせや営業なんかで時間がずれることは多々。
だからこの日も俺がその時間帯に昼食に入ること、二人は気にした様子はなかった。
瑞野さんが指定した店には徒歩で10分弱の所にあった。店の半分がオープンテラスになっていて、敷地を囲む洒落たアイアンの柵に、緑が生い茂っている。
洒落た作りだが、少し敬遠しそうな…
中身が見えないってだけで、その店に踏み込む勇気がちょっと必要だよな。メニューも出てないし。瑞野さんが『カフェ』と言ってたから間違いないだろうけど。
何度も『Foxed』と書かれた看板を確認すると、屋内スペースのこれまた奥まった席で瑞野さんが紅茶を飲んでいた。
「ごめん、待った?」
と俺が手を軽く挙げると、瑞野さんは弾かれたように立ち上がり慌てて頭を下げる。
「すみません、こんな所にお呼びだてして」
「いや、いいよ」
しかしメールだと機械的で冷たい感じなのに、実際会ってみるとそうでもないって、流石秘書??
ホットコーヒーを注文した俺に
「昨日は……本当にすみませんでした!」
ガバっと頭を下げられ、ウェイターがまだ立ち去ってなかったから、俺とウェイター二人で揃って目を丸めた。