Fahrenheit -華氏- Ⅲ

ちょうど海老紅葉寄せ、焼取り松茸、やまと芋と六方銀なん、おぼろ昆布、針しょうがの椀物が届いた。


「あなたの背景―――…?」探る様に目を上げると


神来社支社長の方がちょっとびっくりしたように顎を引き


「ご存じない?」と目を上げる。


俺は思わず紫利さんと目を合わせた。


『知ってる?』
『知るわけないじゃない』


と目線でやり取りをしていると


「あなたは何も知らずに、ただそれだけで私を頼ってきたと言うわけですか、いや、それだけで」と神来社支社長は何が可笑しいのかくすくす笑っている。


気付いたら支社長のグラスのビールは残り4分の1になっていた。慌てて注ごうとしたものの、またも紫利さんが


「どうぞ、お聞かせ願いたいですね、そのお話。女のわたくしが聞いていいものでなければわたくしは席を外しますが」と素早く重ね


「いやいや、そう大したものじゃないよ。それに美人に酌をしてもらってほろ酔いだからね、機嫌良く喋られる」と神来社支社長は軽く手をあげ


「私はてっきり、啓人さん、あなたが


私が緑川副社長の弟だと言うことを知っているのだと思ってました」


は……


お…





おとーと!!!!?


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