Fahrenheit -華氏- Ⅲ
車が完全に視界から消えるのを見届け
「知ってた?」
俺は隣に居る紫利さんを見下ろし
「知るわけないでしょ?びっくりしたわよ」と紫利さんは顔を歪める。
びっくりしているようには見えなかったけど。
「でも、これで強力な味方を得ることができたな」
「まぁ彼の話が真実ならね」と紫利さんは目を細める。
「まさか疑ってるの?」俺が眉を寄せると
「疑ってるわけないけど、私にとって100%ってわけじゃないわ。まぁマダム・バタフライに来てもらえれば、こっちのホームだから、何とかするわよ」
「さっきの上品な紫利さん、どこへ行ったんだよ」
思わず目を細めて流し目で紫利さんを見ると
「女って言う生き物は生まれながらの女優なのよ」と意地悪そうに笑った。
不覚にも、その笑顔に
堕ちそうになった。
と言うのは瑠華に黙っておこう。
「そう言えば…紫利さん、まだ瑠華と連絡取り合ってる?」
「ええ、こないだの休日も電話でお喋りしたわ♪」と紫利さんは楽し気だ。「妹がもう一人できた気分よ、三人姉妹って響きがいいじゃない?」
長女が紫利さんで、次女があのいかにも気が強そうな萌羽とか言う美人のホステスで、三女が瑠華……?
濃い三姉妹だぜ。
「悪いけど、今日瑠華に連絡してくれる?」
「いいけど、何故?」紫利さんは怪訝そうに顎を引く。
俺はかくかくしかじか事情を話し聞かせた。