Fahrenheit -華氏- Ⅲ
通話を切った携帯を見つめ、
瑠華の感情がとりあえずは落ち着いている、と言うことだけ確認できてそれだけで少し安心しよう、と思い
壁掛け時計を眺めた。
今日の約12時間後には役員たちの会食が始まる。
やれることだけはやった。とりあえず神来社支社長と紫利さんに賭けるしかない。
アルコールは幾分か入っているが、緊張からか一向に酔いはこない。
眠ることを早々に諦め、俺はキッチンに立った。
料理をしていると―――気が紛れる。
―――――
――
珍しく朝食を作り終えたのは夜明け前の4時。流石に疲れた。
体力不足は考えを鈍らせる。緊張ばかりで身体のあちこちが凝っている気がするし。
仮眠の為、ソファに寝転がりアラームをセットして俺はひとときの睡眠を貪った。
目が覚めると6時だった。通常なら遅いが、今日はわざわざ遅めに設定した。
スッキリと…と言う分けにはいかないが、何とか目覚め、いつも通りのルーティーンで身支度を整え、朝食用に作ったサンドイッチを紙袋に詰め、家を後にした。
少し時間が遅くなるだけで道路って意外に混むのな。
予定していた時間より15分程遅れて出社すると
瑠華は勿論佐々木も出社していた。佐々木と瑠華はPCに向かいつつも少しだけ雑談をしている状態。
「また寝坊ですか?」と佐々木はのんびり聞いてきたが、
「いや、“これ”作ってきた」と言って、トン…俺は三人のデスクが連結している部分に紙袋を置いた。
「何ですかこれ」と佐々木が覗き込む。俺はその中に手を突っ込み、プラ容器に入れたサンドイッチを取り出した。ご丁寧に三人分個別にわけてある。
「朝食。最近ごたごた続きで迷惑掛けてるから」
まぁゴタゴタしているのは俺だけで、他の二人は巻き込まれてるって感じだが。ほんの詫びのつもりだったが
「ぅわ!おいしそ~!!」と佐々木は大喜び。パックを手渡された瑠華も目を大きく開いてまばたいている。
始業時間まであと20分はある。