Fahrenheit -華氏- Ⅲ
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てっきり、資料室に行ったのかと思っていた。
だから俺は喫煙ルームの扉を開けたわけだが、自販機の影に隠れるように、相変わらずしゃがみこむ形でタバコを吸っていた瑠華の姿を見て、そして彼女と目があって思わず目を開いた。
この状態で回れ右して喫煙ルームを出るのはどうかと…
「あ…柏木さん…てっきり資料室に向かったものだと…」
と言った後に後悔した。
喫煙室に居たら来なかったのか、と問われそうだ。
だが瑠華はそれについては何も言わず
「お疲れ様です」と短く挨拶を返してきた。
き……キマヅイ…
ちらりと瑠華の方を見ると瑠華のタバコは二分の一程になっていた。
あと五分?いや……三分ぐらい…?
と計算していると、賑やかな声を振りまいて女性社員が入ってきた。
天の助け!?
揃いの制服に身を纏った女性社員たちは恐らく同じフロアの広報部の社員なんだろう。
少し派手目の髪型と化粧で、香水もキツめ。苦手な部類であったが、瑠華と二人きりと言うキマヅイ状態から救ってくれたと思えば、目を瞑れる。
「あ、神流部長!お疲れ様で~す」
彼女たちは自販機の影になっている瑠華を見つけられなかったようで、明るく挨拶してきた。
「お、お疲れさま」
しかし
ブランド物のシガレットケースを手にしているものの、彼女たちはそこからタバコを取り出す様子もなく
「部長!瑞野さんと付き合ってるって本当なんですか!」
とど直球に勢い込まれて、
げほっごほっ!
タバコを吸っていた俺は盛大にむせた。