Fahrenheit -華氏- Ⅲ
それは啓が瑞野さんと関係してる、と言う噂なのだろうか。
「あなたは瑞野さんのこと、どう思います?」
思い切って聞いてみた。
「どう……?」
緑川さんは目をまばたき
「そりゃ最初は…二村くんの本命が瑞野さんかもーって思ったとき、凄く嫉妬したし、消えて欲しいと思ったぐらいです」
「そうですよね。でもそう言う意味ではなく、あなたと瑞野さん、同期ですよね。
あなたから見た瑞野さんの第一印象とか」
「第一印象?」
緑川さんは「うーん」と唸り
「確か…研修でちらっと見かけたことがあった気が…」と首を捻り
「あ!そうそう!同期の男の子たちが『すっげー可愛い子がいる!』って騒いでたのを聞いて、気になって、『どんな子なんだろう』って…」
「その時の印象は?二村さんは近くにいましたか?」
「ううん、居なかった気がする…て言うか覚えてないです。でも二村くんぐらい目立ったらたぶん記憶にあるだろうし」と緑川さんは更に考えるように首を捻り
「でも、『えー、オトコって何であんなブリッ子好きになるのー』って思った記憶が」
「ブリッ子…」
「だってぇ、いかにも『あたし男の人がいないと何もできません』て顔して、何気に同期の中で成績も良かったしぃ」と緑川さんは面白く無さそう巻いた毛先を指でいじる。
「優秀だった、と言うことですか」
あたしが聞くと、緑川さんは唇を尖らせた。
「確かに優秀かもしれませんけど、
二村くんの気持ちを利用して本命の部長に近づくなんて
やっぱり相当あざといじゃないですかぁ。ずる賢いって言うのか」
二村さんの気持ちを利用して―――
啓に近づく―――……
本命―――?