Fahrenheit -華氏- Ⅲ
二村は会食のメンバーに入っていない筈。
てか、そもそも流石に重役たちもそんな重要な会議に殆ど得体の知れない若造を同席させる筈がないだろう。
どこかで見張るのだろうか。或いはどこかで重役たちの誰かと接触するのだろうか。
いや、考えたところで可能性が高いにしてもその方法が果てしなく多いことに頭が痛くなってくる。
タバコを一本灰にして、俺は結局仕事に戻った。
他に行く所がない。
一度家に戻っても良かったが、職場に居ても同じことだろう、それなら仕事をしていた方がちょっとは気が紛れるかも、と言う理由だ。
夜も22時を過ぎると流石に残業をしている部署が少なくなった。それから30分後は、各々の部署で灯りが消え、前は瑠華と残業をしている際にあまり気にならなかった光景に、ほんの少し寂しさを覚える。
次々と明かりが消えていくブースは、一つ、そしてまた一つと言った具合に闇を引きつれ、その音のない闇はやがて俺まで呑みこもうとしている、そんな錯覚に陥った。
―――孤独だ。
仕事をしていて初めてそう思った。
時間が経つと同時に空腹もやってきた。そう言えば朝にサンドイッチを食べて以来、まともな食事をしていなかった。
こんなことなら無理言ってでも裕二に付き合ってもらうんだった。
ただ佐々木の席に座ってだべってるだけでもいい。暇つぶしになるしな。
そんなことをぼんやりと考えていると
「お疲れ様です」
目の前がふいに白い何かで遮られた。