Fahrenheit -華氏- Ⅲ
Z4は決して広くない。車内にたちまち彼女の香りが充満した……気がした。
瑠華の使っているシャンプーと酷似した、その香り。
それだけで錯覚しそうになる。
瑠華が隣に座って、笑いかけてくれている―――と。
けれど
違う。
「やっぱこの時間空いてるね、いつも駐車場いっぱいなのに」と梨々花嬢は広くない駐車場を眺めていて、その横顔は―――当然ながら瑠華じゃない。
駐車場に車を入れ、ファミレス内に入り
「いらっしゃいませ、今は禁煙席、喫煙席どちらも開いてますが」と店員に聞かれ
「あ、タバコ吸う?」と梨々花嬢は俺に聞いてきて
「あ、はい」と何とか頷く。
どーした、俺。
女に(しかも結構美人)相手に、こんなリード?されるような…
村木の娘だから……か??
て言うか何か逆らえない雰囲気なんだよね、この女。
真咲と似たタイプだ。
店内は空いていた。
喫煙席部分の三分の二程空席になっていて、俺たちは一番いい奥の広めの席に通された。
「はい」とメニュー表を手渡され、受け取る。
「何にしようかな~」とメニュー表を眺めている梨々花嬢を見て、
何を……考えてる?とちょっと気になった。
だってこないだ派手に親子喧嘩見せつけられて、その後父親は俺と瑠華を無理やり引っ張っていったんだぜ?
挙句の果て…俺に見合いをさせるだぁ!?
梨々花嬢が顔を上げる気配があって、俺は慌ててメニュー表を眺めた。