Fahrenheit -華氏- Ⅲ
そこには『いかにも』と言ったファミレスらしいメニューがずらりと並んでいる。
悩むこともない。
「ホットコーヒーを…」と顔を上げたとき、梨々花嬢とバッチリ視線が合った。
彼女は臆することなくじっと俺の方を見て
「やっぱ、ナイわ」と一言。
―――は??
ないって何が??
梨々花嬢は頬杖をつきながら
「イケメン過ぎる人、私苦手なの」
それは……褒められてるの?けなされてるの?
「車は高級車でしょ~?顔はイケメン。背も高くてスタイルも良し。香りまでオシャレとか出来過ぎてない?」
褒められて―――ないな……バカにされてんのか…
「褒め言葉どーも」と俺も似非クサイ笑顔で返した。
梨々花嬢はここに来てようやく苦笑を浮かべた。
「……ごめんなさい、ちょっと意地悪言っちゃった」
「意地悪言われました」と俺も笑うと
「あはは」と梨々花嬢はまたも明るく笑った。
「切り返し方、慣れてるわね~、遊び歩いてる人っぽい」
「そのとーり、て言うか前まではね」
運ばれてきたホットコーヒーに口を付けながら窓の外を眺めた。
「俺、こんなだけど、すっげぇ好きなひとができて
すっげぇ大切にしたくて
守りたくて―――
でも
守り切れなかった。
いや……今でも守りたいって思っててあがいて、
でも本当にこれで取り戻せるのか、とか、まだ色々不安で―――」
俺、何やってんの。
宿敵の娘に人生相談みたいなこと…
今、まさに重役会議がなされてる最中だって言うのに、ことの重大さ会社の未来より瑠華への気持ちの方が大きい。
そんなことを考えながら俯いていると、ふっと頭上に影が覆った。
梨々花嬢が腕を伸ばし、俺の頭をぽんぽん。
「迷子に
なってるんだね」