Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「すみません、会長に呼ばれてるので」と瑠華はいつも通り……そっけない物言いで秒殺をキメたが…


「会長に?じゃさ、終わったら一緒にいこ~よ~」と二村はしつこい。


消えろ。


今すぐ俺たちの前から





消えろ!





怒りが爆発しそうになり、口や態度に出そうになったが何とか堪える。


「すみませんが、私は先約があるので。佐々木さんと」と瑠華は佐々木の方を見た。


名指しされた佐々木は驚いたように自分を指さしたが、空気を読んだのだろう


「そ、そうそう!僕と社食行こうとしてたんですよね~、今日のA定は何だろうって二人で盛り上がって」


と慌てて言う。


佐々木、サンキュ。


「じゃぁさ~明日とか」


と二村はしつこい。


「二村…」いい加減に……と言いかけたが、それよりも早く



「この際だからハッキリ言います。私はあなたと食事を摂る理由も義理もありません。迷惑です」


と瑠華が、いつもの無表情の中少しだけ怒気を含めキッパリ言い放った。


二人のやり取りを見ていた佐々木がちょっと驚いたように目をまばたいている。


それでも空気を読めないのか、或は挑発しているのか


「えー、相変わらず冷たいな~、一回だけでもいいじゃん♪行こうよ~」と二村はしつこい。





いい加減にしろ!




怒鳴りたいのを堪えながら腰を上げようとするときだった。


俺が立ち上がると同時、二村の手が瑠華に伸びてきて瑠華の腕を掴んだ。





「痛ッ!」




二村は軽く掴んだ筈だ。それにこいつなりのスキンシップの範囲に入るだろうが。


その『軽い』スキンシップにも瑠華が声をあげ、痛そうに顔を歪めた。




二村が掴んでいたその場所―――






左腕―――


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