Fahrenheit -華氏- Ⅲ
葵さんの買ってきてくれたポテトフライは揚げたてなのかほかほかと熱かった。
「うっま!」
葵さんはポテトフライを口に入れ、破顔。それはそれは美味しそうにポテトフライを頬張る。
「瑠華ちゃんが御馳走してくれたフランス料理もうまかったけどさ~、俺的にはこっちの方が好きって言うか」
「同感です」
ポテトフライの一本を口に入れてあたしは頷いた。ちょうどいい加減に塩が効いている。
「ホント?瑠華ちゃんて毎日ああゆう食事してるかと思ったけど」
「まさか。正直言ってああゆう場は苦手です」
「うっそだぁ、慣れてる感はあったよ」
まぁ、確かに……不慣れではないけれど。
「昔は…ああ言う場が多くて、疲れました。だからこう言う気取らないところが今は好きです」
「はぁ~やっぱ瑠華ちゃんはセレブだったわけかぁ」と葵さんは足を投げ出す。
セレブ…と言うわけではない。嫁いだ先がそうだったから…
とは流石に言えない。
黙ってもそもそとポテトフライを食べていると、ボソボソとしたポテトの食感が喉に詰まった。
あたしが慌ててコーラに手を伸ばすのと
「大丈夫?」と同じく慌てた様子の葵さんの手とが重なった。
思わず、ぱっと手を離す。
何を―――あたしは意識しているのだろう。ほんの少し手が触れただけなのに。
けれど葵さんは気にした様子も無く
「慌てて食べると火傷するよ~?」とにこにこ笑ってあたしにコーラを手渡してくれた。
「ありがとう……ございます」
今度はきちんとコーラのカップを手にすると
「瑠華ちゃんて意外にドジ?」と葵さんの手が重なり、あたしにしっかりとカップを握らせる。
「そうかもしれませんね」
あたしは俯いたまま言い、葵さんの手をやんわりと払った。
このひとは―――調子が狂う。