Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ポテトフライやフランクフルトを食べ終えてお腹もいっぱいになったとき、あたしたちはベンチを立ち上がり、本来の目的の水族館に向かった。
「ね、手繋いでいい?」
突如として葵さんは提案してきて、あたしは目を開いた。
「その必要性が?」と目を上げると、
「う~ん…必要性とかじゃなくて…」と葵さんが顎に手を当てる。
「シチュエーション的な?」
「何ですか、その”的な?”と言うのは」
「だって普通、こうゆう所にくる男女ってカップルて相場が決まってるじゃん?」
葵さんは周りをきょろきょろ。
確かに……あたしたち以外の男女は……割と同じ年代の男女で手を繋いだり腰に手をやったり。
「でも私たちはカップルではありません」
ハッキリきっぱり言うと
「そうだけど~、傍から見たらそう見えるかな~って思って」
傍から見たら??
「そう言うのは”ホンモノ”の恋人にしてあげてください」
ちょっとした嫌味を言うと、葵さんは「ちぇ~」と口を尖らせる。けれどめげるのは数秒間で
「ね、瑠華ちゃんは水族館いつぶり?」と聞かれ、
いつぶり……と聞かれたら……あたしは頭の中でちょっと計算。
最後に水族館に行ったのは―――確かユーリがまだ二歳のとき。
今から二年前の話だ。
確かあれは…ニューヨーク水族館に待望のサメをテーマとした新館、『Ocean Wonders:Sharks!』がオープンした夏休み真っ盛り。
巨大水槽に悠遊と泳ぐサメやエイの迫力のある美しいディスプレイが素晴らしかった。
ユーリは成長が早い方だったのか一瞬でも手を離すと一人でどこかへいっちゃう子だった。捕まえたら捕まえたで「No,I want to go that way.(イヤ、あっちへ行くの)」と自己主張したり、かと思うと珍しいお魚を発見して「What was that?(あれ何?)」と聞いてきたり。
当時はそれなりに大変だったけれど
今はいい想い出。