Fahrenheit -華氏- Ⅲ

水族館の建物の前に着くと、入館料チケットの売り場カウンターが見えた。


大人入場料、2,000円になっている。


「待っててください、入場料払ってきます」


と言って歩き出すと、その手を葵さんがまたも掴んだ。


「大丈夫、大丈夫♪もう入手済~」と二枚のチケットを手でかざす葵さん。


「え?」思わず目をまばたくと


「ツレがただ券くれてサ♪」


そのたただ券と言うものを目を細めてじっと見ると


「嘘ばっかり、それ、今日の日付の刻印がされてますよ」と指摘すると葵さんは慌てた。


「これはそのっ…!」


「あなたの”親しく”している女性から”むしり取った”お金では入館したくありません。私の分は」と言ってバッグから財布を取り出そうとすると


「敵わないな~瑠華ちゃんには」と葵さんはやや大げさにため息。


「安心してよ、このチケット、オンナからの貢物じゃないし。まぁオンナには変わらないんだけど」


「女ですか男ですか、どちらにしても私は…」と眉を上げると


「このチケット代は瑠華ちゃんから貰ったお金で買った分。いいだろ?俺が瑠華ちゃんから貰った金をどう使おうと」


まぁ確かに。


「あーあ、かっこつけようとしたけど台無しだよ~」と、葵さんはつまらなさそうに呟き頭の後ろで手を組む。


「ご安心ください、あなたはご自身でどれだけかっこつけようとしても、私の前ではつかないので」


とあっさり言うと葵さんは思いっきり顔を歪め、けれどすぐににぱっと顔色を変えると


「でも、そーゆうとこも結構好きだったり」


あそっ。


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