Fahrenheit -華氏- Ⅲ

葵さんの反応を見て、それが図星だってことに気付いた。


「今でもミミちゃんのことを?」


「まさか」


葵さんの返事はすぐに返ってきた。葵さんは心外そうに顔をしかめる。


「ひとのカノジョを思う程俺は真剣になれないみたいだし、ましてや奪い取る体力もないし


ミミちゃんのことも単に『可愛くて優しいし、連れ歩いたら自慢になるな』て程度」


嘘を―――言っているようには見えなかった。


けれど当時の気持ちはきっとそうだったのだろう。


「だってあれから十年以上経ってるんだよー、ミミちゃんだって変わってるだろうし。


それに俺―――



今、気になってるひといるし」



気になってるひと?


「今同棲中の彼女ではなく?」


「同棲は解消。てかそもそも好きじゃなかったし。俺にとっては単なる金づるだったから」


「サイテーですね」


「まぁまぁ、それはおいといて~


気になる人ができたって素直に言ったら家出てけって追い出された」


なはは、と葵さんは明るく笑う。


当然のことだろう。


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