Fahrenheit -華氏- Ⅲ

感動ポイントはピンクやブルー、グリーンなどのライトアップがされて、その都度クラゲが色を変えるから。


その後葵さんは二村さんや家族の話をすることなく、葵さんが始めたキャバクラのボーイの仕事の話になった。正直興味が無かったが、葵さんは楽しそうにしている。


3階に行くと、ペンギンの水槽もあった。流石にペンギンは人気なのか水槽の前に人だかりができている。


遠目でそれをやり過ごし、いよいよイルカショーの観客席に向かう直前だった。


「お客さま~」と水族館の制服を着て、首に一眼レフカメラをぶら下げた女性スタッフに気軽に声を掛けられた。


あたしと葵さんの足は思わず止まった。


「これからイルカショーを見に行かれるんですよね、記念に一枚どうですか?」


とカメラを構えにこにこ。笑顔の指し示した方に二匹のイルカを象った大きなパネルが置いてあって


記念撮影?


意味もないことだ。


「結構で…」す、と断る前に


「あ、じゃ~お願いします!」と葵さんが勢いよく挙手。


え?


思わず目をまばたいて葵さんを見上げると、彼はあたしの手をとって「俺のスマホでも撮ってくれますか~?」と女性スタッフに愛想を振りまいている。


「勿論です」と女性スタッフがにこにこ答える。


「ちょっ…!」と、と言う間もなく葵さんにほぼ強引にイルカのパネルの前に連れてこられた。


よく見るとイルカ二匹はくちばしの先をくっつけて対照の…つがいに見えた。


シルエットだけ見るとまるでハートみたい。


「行きますよ~♪」女性スタッフの明るい声があがった。


反射的に彼女が向けるカメラに視線を向けたけれど、あたしは笑顔を浮かべられなかった。


女性スタッフはシャッターを切る前に


「彼女さん、もっと笑って下さ~い♪」と手を振る。


彼女??


あたしが?



葵さんの彼女―――?


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