Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ショーの進行役のお姉さんの掛け声で、イルカたちは飛んだり跳ねたり、水中をもの凄い勢いで泳いできたら突如として水上にジャンプ。天高く吊るされたロープに下がったボールにくちばしでタッチ。
「凄い」
思わず拍手をすると、葵さんも「おお~っ!すっげぇ!」と大きな拍手。
お姉さんが掲げたフラフープの中を華麗に潜り抜け、五匹そろっての水中からのジャンプは見事にシンクロしていた。
あちこちで歓声が沸き起こる。
あたしも同じ様に拍手したり、「わっ」とか「凄い」とか声を小さくあげたり。(大きな声を使うと体力を使う。何せこの後も葵さんと一緒なわけだし)
ショーは20分程で終わった。
「すっげ~楽しかったね!」と葵さんはハイテンションで全力で笑顔。
「そうですね」あたしも同意した。
楽しかったのは事実だ。
「……」
葵さんは笑うのを止めて、まじまじとあたしを覗き込んできた。
「な、何ですか…」
思わず腰を引くと
「瑠華ちゃん、今笑った?」
え……?
「……さぁ」自分でも意識してなかったから、自分がどういう表情をしていたのか分からない。
「絶対笑ったよ!めちゃくちゃ可愛いじゃん!」
葵さんは顏の前で手を合わせて頬をちょっと赤らめる。
「あ、ありがとうございます」
葵さんの反応に、あたしの方まで何だか恥ずかしくなってきた。
「じゃ、行こうか」と葵さんは笑顔を貼りつけたままあたしの手を取り歩き出す。
「ちょっ…!どこへ?」
「決まってるじゃん、さっきの写真受け取りに。イルカショーの後に出来上がってるって言ってたじゃん」
そうだった…
あたしたちは写真を撮った場所まで逆戻り。