Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「この際だからその常務を陥れるため、紫利さんにハニートラップを仕掛けてもらうとか」


裕二がポンと手を打ち


「そこまで迷惑かけらんねぇよ。第一あの人は人妻だ。そんな危ない橋渡らせられないよ」俺は目を吊り上げた。


「そうよぉ、紫利さんに危険が及ぶじゃない」


綾子が言い、


「とにかく、一つ分かってることは粉飾決算がないこと、柏木さんは会長の愛人じゃないってことをハッキリさせるべきじゃない?」と珍しく(?)桐島がまともな意見。


「つってもどう証明すればいいんだか…」


「決算報告書を提出したところで意味はないわよね、ついでに言うと柏木さんが会長の愛人説だって言うのも証明しようがないわ」


「くっそ…!どうすれば…」と唸っているときだった。


TRRR!


俺の携帯……しかも会社の方??に見知らぬ番号が通知されていた。


412-XXX-XXXX?


市内番号からすると横浜??


登録はされてないが、取引先の一つか?


「わり、電話」と言って俺はその場で電話を取った。


「はい、神流グループ㈱本社外資物流管理部、神流です」と真面目に電話に出ると


『あの…!瑞野 みゆきの母ですが』


との言葉に


「へ!?」


俺は間抜けな声を出していた。


三人が俺を注目する。


そっか……


そう言えば、酔っぱらった瑞野さんを彼女の実家まで連れ帰って、そのとき瑞野さんのお母さんに名刺を渡したんだった。


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