Fahrenheit -華氏- Ⅲ
通されたのは昔ながらのThe『応接間』てな具合で、大きめのソファが向かい合っていて、その間にローテーブル。テーブルの上にレースのクロスが置いてあった。その上にいかにも重さがありそうなガラス製の灰皿が置いてある。
俺の実家を建て直す前、その時はじいちゃんの家だったが、確かにこう言う応接室があったのは確かだ。だが、親父の代で建て替え、応接間はなくなった。
イマドキ応接間がある家なんて珍しい。
もの珍しそうにキョロキョロとしていると
「古い家でしょう」
村木が不愛想に言い
「いえ……まぁどこか懐かしいなって…」素直な感想を口にすると、村木は一つのソファに俺を促しながら
「この家は妻の実家で、妻は建て直すことを考えていたのですが、私が反対しました」
何で??
やっぱケチだからか?
建て直すってそれなりの金が掛かるからな。
だが村木の言葉は意外なものだった。
「妻の両親はすでに他界していて、でも妻と妻の両親が住んでいた想い出の詰まった家をそう簡単に取り壊してしまうのもどうかと思ったので」
俺は目をまばたいた。
「まぁ築50年はいってますからね、そろそろ耐震とか考えた方がいい、と妻が真剣に言うのでそろそろ、とは思ってますけどね。
それに梨々花が出産とかで里帰りしたとき、きれいな家の方が何かと便利かと」
村木―――……陰険だけど、あんたイイとこあんじゃん。
俺はちょっと感心した。
だけど
「私はまだサイト―のこと認めていませんがね」と、村木は真向かいで腕を組みブスリと答える。
いい加減認めてやれよ。