Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「やはり私が瓜生常務に近づくのが早道ですね」
村木は俺の手土産のマンゴーゼリーを美味しそうに一口。
「そうしてくれると助かります。まずはトップを崩さないと」
「崩す、と言うのは難しいと思いますがまずは探りを入れてみます」
村木はマンゴーゼリーが気に入ったのか、その表情はどこか穏やかだった。
「婚外子が誰なのか分かったらすぐに報告しますよ」
「助かります」
「神流グループの関係者でなければいいのですが、鴨志田監査役の話し方からして恐らく関係者だと思われますが」
それは厄介だな…
「神来社支社長の息子のようにグループ会社の社員でも全くの関係がなければいいんですが」
「それは探りを入れてからあなたに報告しますよ」
村木のマンゴーゼリーは殆ど無くなっていた。
意外。こんな顔して甘党だったんだな。
俺の白桃ゼリーも賄賂(?)として渡そうとしたが、梨々花嬢に止められてたしな。
「私は瓜生常務の身辺を探ります。あなたは二村の行動を探ってくれますか」
村木に提案され俺は目をまばたいた。
「二村は―――何かとつけてあなたにちょっかいをかけている。まるであなたを挑発するように」
それは―――薄々分かっていた。
あいつは―――俺に個人的恨みを抱いている。
恨みをかった覚えはないが。
でも、それを逆手に取るのもいいかもしれない。