Fahrenheit -華氏- Ⅲ
想い出にするには早すぎる。
♥Ruka♥
遡ること一日前。
家に帰りついたのは夜も19:00過ぎだった。
……疲れた。
例の如く、あたしはソファにバッグを放り投げ、その横にドサリと体を沈める。
バッグを放り投げたからか、中から葵さんが買ってくれた(正確にはあたしのお金だけど)写真と、スノードームの紙袋が飛び出た。
あたしは写真を取り出し、改めて仏頂面の自分を見て小さく吐息。
こう見ると、あたしと葵さんが実は一歳差だと言うこと、分からないだろう。つまり葵さんがそれだけ童顔だし、ファッションも若め。スタッフの人は歳の差カップルだと思ったに違いない。
しかし…
『飾っておいて』と言われたけれど、飾る場所なんてないし、飾る気もない。
でも―――スノードームはどこかに置いておこう。
『疲れたらさ、
ちょっと休憩すればいいんだよ』
葵さんの言葉をふと思い出す。
だけど
休憩―――の仕方があたしには分からない。
明日は日曜日だ。何も考えずただ自分だけの世界に浸かりたい。
そうね、睡眠薬を少し多めに飲んで睡眠を貪るのも悪くない。
ソファの背に深く背を預けていると
TRRRR…
スマホが着信を報せた。
着信:紫利さん
と、なっていてあたしは慌てて通話ボタンをタップした。
昨夜電話を無視してしまったことを申し訳なく思う。
「紫利さん、すみませ……」と開口一番に謝ると同時
『良かった、電話が通じないからちょっと心配してた』と紫利さんがどこかほっとしたように口にした。その言葉にあたしの方も安堵した。
「ご心配をお掛けして、申し訳ございません」素直に謝ると
『いいえ、大丈夫よ。あなたが無事で良かった』と紫利さんは電話の向こう側で小さく笑った。
ほっと胸を撫で下ろす。
『今日は一日どうしてたの?』
紫利さんに聞かれ、あたしは一部始終を―――……話そうと思って、止めた。
「ちょっと色々用事がありまして…」
『そう』紫利さんは短く答えた。それ以上は突っ込んでこない。
このひとのこうゆう雰囲気、啓と似てる。
深く入られたくない場所に、土足であがりこむようなことをしないこと。
休憩―――……か…
葵さんの言葉をふと思い出し
「紫利さん、突然ですが明日空いていますか?」
と聞いていた。