Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「で?何を聞きだすって言うんですか」


俺が聞くと


「まずは瓜生常務の婚外子の件ですかね。認知していない子の母親のことも探れればいいのですが」


まぁ、つつくのならそこからだよなー…


脅す内容のネタになるし。


「分かりましたよ、俺から紫利さんに連絡入れておきます。詳しい日時が分かったのならまた教えてください」


「ええ、そうします。しかしここの定食は本当にうまくない。これで600円とか高くないですか?」


と聞かれ俺は肩を竦めた。


休憩から戻ると、雨の勢力は益々増していた。


もう一度ウェザーニュースを開けたが、もうすでに一部のJRなどの交通機関が麻痺している。


「ヤッタね♪早く帰れる♪」と他部署から制服を着た女子社員が場違いな発言をしながらぞろぞろ帰り支度。


佐々木も瑠華もそれ程彼らの行動や言動を気にしていないのか、黙々と業務をこなしていた。


俺は二人に向かって


「今日は二人とも上がって」


と短く言った。


「え?」最初に目を上げたのは佐々木だった。


「でも、まだ山手線は動いてますよ」ときょとんとしている。


「帰る途中で止まったらどうすんだ。柏木さんも、いくら東京メトロだとは言え何があるか分からないから」


と言った所で瑠華が顔をあげた。


「しかし…」と瑠華は言いたげだったが、


「社員が無事帰宅してまでが、会社の責任だ。それすなわち俺の責任」


俺は自分を指さし、真剣に言うと二人はぎこちなくも頷き、席を立ち上がった。

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