Fahrenheit -華氏- Ⅲ

てか、何てベタな設定。


閉じ込められたエレベーターで恋が芽生える、的な?


いやいや、ないない。


相手が瑠華だったら良かったのに……


なんて、不純なことを考えてる俺、二人の女性に悪いことだよな、こんなこと考えてるなんて。


「瑞野さん、携帯貸して?蛍光灯灯して?そしたら少し明るくなると思うから」


俺も自身の携帯を取り出し、ライトを灯す。ほんの僅かだが、懐中電灯代わりにはちょうどいい。


瑞野さんは震える手でバッグの中をまさぐり、何とかスマホを取り出したものの、震えているせいかその手からスマホが床に落ちた。


「あ……」


瑞野さんは小さく声を漏らし、スマホに手を伸ばしたがどこかに触れたのだろう。


パっと一瞬だけほの明るい待ち受け画面が映しだされた。


一瞬しか見えなかったけれど…


二人…それも男女の指がチェーンネックレスにかかった指輪を掲げてる写真だった。


それは以前、二村と瑞野さんがしていたリング……


瑞野さんは慌ててそれを手で塞ぎ


「ライトですね……ちょっと待っててください…」とか細い声で言った。




瑞野さんはやっぱり―――


二村のことが―――……?




と考えていると、ぱっと辺りが明るくなった。


瑞野さんがライトを灯したようだ。


ちらりと見たが、瑞野さんの首にはチェーンネックレスに掛かった指輪は見当たらなかった。


「これでちょっと安心?」俺は待ち受け画面を見ていないフリで何ともない様子で瑞野さんに笑いかけた。


「あ……はい!」瑞野さんが答える。


その声に幾分か冷静さを取り戻した気配を感じたが


またもドーンっ!と言う音が聞こえて、


「もぉヤダ!」とまたも瑞野さんは俺の腕に縋り逆戻り。


俺が言いたいよ、


もうヤダって……


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