Fahrenheit -華氏- Ⅲ
それでも腕の中で震えている瑞野さんを無碍にもできず
ふわっ
俺は瑞野さんの後ろ側から彼女の両耳を手のひらで包んだ。
瑞野さんの涙目が俺の方へ向けられる。
「これだったら雷の音、聞こえないだろ?
つっても、俺の声も聞こえねぇか」
俺が苦笑いをすると、瑞野さんは少し目をまばたきさせ、それでも俺の腕に縋ったまま、俺の肩に頭を乗せてきた。
俺の手のひらは瑞野さんのあたたかい体温、手の甲には柔らかい髪。
おまけに俺の肩に瑞野さんの頭が乗せられている。瑞野さんの使っているシャンプーか、それとも香水の香りなのか、花のような香りが鼻孔をくすぐる。
これって(色々)ヤバイ状況なんじゃね?
と思いつつも、こんなに怖がってる彼女を無碍にもできない。
「……優しいんですね……部長…ありがとうございます」
俺の腕を抱きしめながら瑞野さんが目を伏せ、口元に淡い笑み。けれどその目からは涙の粒が零れ落ちていた。
よっぽど怖かったに違いない。
安心したのだろう。
瑞野さんは淡いベージュのスーツを着ていて、そのスカートから覗いたきれいな脚で斜め座りをしていた。
細さとか形と言い、脚まで瑠華と似てる……
俺は瑠華といると
錯覚していた。
「瑠華――――」
瑞野さんの頭を引き寄せ、彼女の髪にそっと
口づけしていた。