Fahrenheit -華氏- Ⅲ
いやいや、これは流石にマズイっしょ。
何とか言い訳をこしらえて別室で……とか考えたけれど、まだゴロゴロと鳴っている雷に演技とはとてもじゃないが思えない、本気で怯えている瑞野さんを見ると放っておけなかった。
てか―――
俺でいいの?
ホントは二村についててもらいたいんじゃないの?
結局、俺たちは俺のフロアの応接室の一室を借りることにした。
八畳程の狭い部屋でソファが二脚、その間にテーブルがある。
その内の一脚に瑞野さんを座らせると、
TRRRR
瑞野さんのスマホが鳴った。
瑞野さんはスマホ画面を見て目をまばたき
「お母さんから……すみません、出てもいいですか?」とおずおずと聞いてきて「勿論」と言う意味で俺は頷いた。
「―――もしもし?―――うん、大丈夫。でもJR止まっちゃってて、今日は会社に泊まることにした。会社の人も一緒だから安心して?
え…!?ううん、前に話したでしょ?女性の上司で木下リーダ―って言う…
うん、だから大丈夫。また明日ね…」
通話を終えて、瑞野さんはまだ立ったままの俺を上目で見て眉を寄せた。
「…すみません、どうしよ……あたし…嘘……着いちゃった」
俺は苦笑い。
「その方がお母さんも安心だろう?一回顔を合わせてるとは言え、男の……しかも他部署の人間だと知ったら、心配になるって」
「そう言う意味じゃ―――
ないのに」
瑞野さんはスマホを胸に抱きながらぽつりと呟いた。