Fahrenheit -華氏- Ⅲ
じゃぁどう言う意味なんだ!!?
と、俺の中の俺が頭を抱え叫んでいるが、顏には出さなかった。
落ち着け啓人、落ち着け自分!
「とりあえず、少し寝たら?俺もついてるし…
あ!安心して!何もしないから!」
俺は顏を引きつらせて慌てて両手を上げる。
それはまるでアメリカの刑事に銃を向けられた逃亡犯のように。
瑞野さんは苦笑いを浮かべ
「まだ……さっきの恐怖から抜け切れてないので…当分は……」
「そっか…」
てか、キマヅイ!!
瑞野さんが寝ていてくれたら楽なのに。
「あ、俺タバコ吸ってくる」胸ポケットに入れたタバコの箱を取り出す仕草をすると、
「あ、あたしも!一人だと怖いので」と言ってきて、これじゃ意味がねー!とまたも俺の心の中で俺が叫ぶ。
でも怖がっている瑞野さんを一人にもできないし、一緒に応接室に泊まる意味もない。断れない俺は瑞野さんを引き連れて喫煙ルームに向かった。
とりあえず、タバコでも吸って考えをまとめよう。
「煙かったらごめん」と一応断りを入れておいた。
二村だって喫煙者だから気になんねぇだろうけど。
との言葉はしまって。
俺がタバコをくわえると同時、サッと瑞野さんがライターに火を灯して俺のタバコの先に向ける。
ちょっとびっくりして目を開くと
「あ!すみません、つい会長のときの癖で」と慌ててその手を引っ込める瑞野さん。
「いや、ありがたく」と言って俺は瑞野さんの厚意に甘えることにした。こんなことされたの紫利さん以外はじめてだ。
「てかあいつ(会長)そんなこともやらせてんの?」俺は素で眉間に皺を寄せた。
「強制されたわけじゃありません。木下リーダ―がそうされていたので、あたしもそうしなくては、と」
「あいつ(親父)は綾子に甘えてるとこあるからなー、そんなことまでしなくてもいいよ」
俺が苦笑いを浮かべると、瑞野さんはちょっとほっとしたようだった。
「会長も木下リーダ―に強要しているわけではなさそうです。木下リーダ―が完璧なだけなんです」
綾子が……完璧ねぇ?