Fahrenheit -華氏- Ⅲ
時間はすでに21時近くになっていた。
「ちょっと早いけど、寝る?瑞野さん怖い思いして疲れてるだろうし」俺は瑞野さんに提案した。
「あ……はい。ではご厚意に甘えて」と瑞野さんはスーツジャケットを羽織るとソファに横になった。
11月の夜は気温も下がる。寒いのだろうか瑞野さんは両肩を抱いている。
俺は自家発電が効いているこの時にエアコンを”暖房”にして、着ていたジャケットを脱ぎ瑞野さんの体に被せた。
瑞野さんが目をまばたく。
「あ…あの!大丈夫です、あたしは。部長が風邪ひいちゃう…」
「いや、俺暑がりだからちょうどいいのヨ。女の子は体を冷やしちゃいけないからね」とわざと軽く言うと
「……ありがとうございます」と言いながらきゅっと俺のジャケットを抱きしめた。
「あったかい―――……
それに……
部長の香りがいっぱい」
「あ、ごめん!臭かった?」
一瞬慌てたが、瑞野さんはゆっくりと首を横に振り
「いいえ、
あたし、この香り大好きなんです。
部長のこの香りが」
香り……Fahrenheitのこと―――……?
「何か……部長の香りに、部長に包まれてる感じで―――
安心します…」
うっすら笑顔を浮かべながらゆっくりと言って瑞野さんは目を閉じた。
そこから心地良さそうな寝息が聞こえてきて、どうやら眠ったようだ、と少し安心した……
が!
『部長に包まれて安心します!』だとぉ!?
それってどう言う意味!!
瑠華も同じこと言ってたけど……
そう言う意味なの!!?
分からない。
瑞野さんの気持ちが―――
分からない。