Fahrenheit -華氏- Ⅲ
『どーするんだよ、瑠華ちゃん!このままいけばあいつ、副社長の跡取りだよ!休憩しろって言ったのは俺だけど…』
「その件でしたら、先手を打ってありますので、ご心配なく」
『先手?』
「ええ、でもその内容は教えられません」キッパリと言いきると
『まぁ瑠華ちゃんがそれならそれでいいけどさー』と葵さんはあっさり引き下がった。と言うかあたしの考えに興味がないようにも思える。
彼の望みはただ一つ。20万と言う報奨金だけなのだ。
だからこそ、これ以上の情報を与えるわけにはいかない。
「ありがとうございます、仕事が残ってますので。それでは」
あたしは早々に電話を切った。
電話を切ると同時に、自家発電が発動したのだろう。暗かった部屋がパッと明るくなった。
あたしは裸足のまま部屋をリビングを横切り、再び窓の外を眺めるとやはり東京都自体は電力を失ったままなのか、黒くてどんよりとした空気に覆われている。
でもあたしは―――本当は宝石のようにまばゆい光に包まれた東京より、この薄暗くどんよりとした風景の方が好きなのかもしれない。
暗い風景に一つ一つ灯りを灯すように―――、一つ一つ何かを進めていく感じ。
それがいい。