Fahrenheit -華氏- Ⅲ
リラックスするつもりで、お風呂に湯に溜めてあたしはいつもの倍時間を掛けてお風呂に入った。
お風呂から上がって念入りにスキンケアをして、
鏡の中、あたしは鏡の中の自分の中で自分の姿を見た。
少しばかり顔つきが険しくなっているのは明日が決行の日だからか。
失敗は許されない。
スキンケアの後、パチパチと顏を軽く叩いて、喝を入れる。
髪を再び乾かし、バスローブ姿であたしは寝室にあるクローゼットを開けた。
明日の服……何を着て行こう。
ウォークインクローゼットのハンガーラックにはたくさんの服が掛かっている。
その中に心音が買ってくれたセットアップスーツが掛かっていた。
上品な色合いのグレージュのジャケットとカットソーのデザインはシンプル、ネイビーのスカートはラインがきれい。全てアルマーニの秋物新作。
またこの服の登場ね。
前回は東星紡の小野田専務に会ったときに着た服。
靴は決めてある。心音が買ってくれたジミー・チュウのパンプス。
濃いベージュに黒いレースがアシンメトリーに配置されているもの。
『二人で一つ。
そうだけれど、もし計画が失敗したのなら、靴を脱ぐのはあたしだけ。
心音に裸足で歩かさせない』
”あの時”あたしはそう決断した。
それを覆すことはしない。
「待ってなさい、二村さん。
あなたの化けの皮、今に剥がしてやるわ」
――――
――
そう決意したものの、
お酒が入ってるのか、すぐに眠れると思ったけれど、眠りは一向にやってこない。
柄にもなく緊張しているせいなのかしら。