Fahrenheit -華氏- Ⅲ
今まで……何度もあたしの頭を悩ませる事柄に直面してきた。
マックスに離婚を切り出すこと、ユーリの親権争い、あたしのFahrenheitの行く末―――
何度目かの身じろぎに
Fahrenheit
あたしは目をまばたき、さっき明日着ていく服を悩んでいるとき、何故気付かなかったのだろう。
と、思ったぐらい、ふと思い出した。
きっと二村さんを倒す為に気が昂ってたからに違いない。
あたしはベッドから抜け出すと、再びクローゼットを開いた。
ふわり
クローゼットを開けたとき巻き起こった僅かな風に乗ってFahrenheitの香りが香ってきた。
啓の香り。
あたしはクローゼットを開けたまま、しばらくその場で佇んでいた。
啓―――
こんな不安……なのかな…、緊張してる夜に抱きしめて欲しいよ。
抱きしめると、ビックリするぐらい細いウェスト。でも細いだけじゃなくてちゃんと男性特有の筋肉もついていて、くっきりとした鎖骨が肩のラインまで続いていて。
凄くセクシー。
啓に―――今すぐ抱きしめて欲しい。
パタン…あたしはクロ―ゼットを閉めた。
これ以上はダメ。
決心が鈍る。
啓の香りを嗅いで、幾分か気持ちが落ち着いた。
「愛してます」
たった一言呟いてベッドに入ると、あたしはその後あっけなく眠りについた。
啓に包まれてる、この感じ。
香りを感じただけで、
凄く―――安心する。
だからあたしは負けない。