Fahrenheit -華氏- Ⅲ
俺は欠伸を漏らしながらもノートPCの蓋を閉じ、書類をまとめて、そこで緊張状態から抜けたのか、急激に空腹を覚えた。
そ言いえば昨日の夜、瑞野さんとカロリーメイトを半分こしただけだ。
コンビニでも行って朝飯でも買ってくるか。
でも腹が減ってるのは瑞野さんだって同じ状況だよな……
「瑞野さん、何か食べたいものある?俺、コンビニ行くから買ってくるけど」と提案すると
「あ、では一緒に…」
と言いかけた言葉を俺は遮った。
「いや…それは……俺らがこの時間帯一緒に歩いてるとこ誰かに見られたらマズイっしょ」
思わず苦笑いで答えると、
「そ、そうですよね!」瑞野さんも慌てて言ってちょっと苦笑。
もちろん、やましいことは何もないが、朝一緒に居るって言うだけで変な噂を立てられる。
「じゃぁあたしが買ってきます。部長は何が宜しいですか?」と聞かれ、それは秘書気質だから?それとも気を使って??
「いや、いいよ。俺が行く。外がどうなってるかまだ分からないし、女の子一人じゃ危ないよ」
応接室には窓が無い。外がどうなってるのか分からないのは事実だ。
瑞野さんは胸の前できゅっと手を握り
「……何で…」
ポツリと言葉を漏らした。
「え?」
思わず耳に手を当てると、瑞野さんが俺の腕に手をやった。
「何で部長はそんなに優しくしてくれるんですか。
そんな風に優しくされると、あたし―――……」