Fahrenheit -華氏- Ⅲ


―――優しくされると?


いや、俺、女に対しては基本(よっぽどのことがない限り※例:綾子とか、シロアリ緑川とか?以外には)優しいし。


「良いっていいって、気にしないで。何がいい?」


これ以上の言葉を聞いてはいけない気がした。俺はやんわりと瑞野さんから手を離し、


応接室の扉を開けた。







サイアク



もっと警戒するべきだった。


瑠華―――ではなかったことが唯一の救いだけど。





二村―――




が通り過ぎる所で、


「あれ?部長、朝早い……」


俺の姿で二村の姿が見えなかったのか、瑞野さんが


「じゃぁ…サンドイッチとか…」と声を掛けてくる。二村と瑞野さんの声が重なった。


二村は立ち止まり、目を開いて


瑞野さんは立ち止まったままの俺を不思議に思ったのか応接室から顔を覗かせ、こちらも息を呑む気配があった。


いや、これにはワケがあって。


と、説明するのも面倒だ。


瑠華に対しては必死に言い訳をするが。


だって二村は俺らをくっつけたがってるようにも見えるし。


けれど二村は俺に険を含んだ視線を投げ寄越してきて、すぐに瑞野さんに近づいた。


「み……ずの、さん。ちょっとこっちへ」と二村は言い、瑞野さんを引っ張って行く。


「……何…」瑞野さんが戸惑ったように…或はほんの少し嫌がっているようにも見えた。


俺は足音を忍ばせて二人の後を追った。二人から見えない壁に隠して彼女たちの話を盗み聞くつもりだ。


何せキーパーソンの瑞野さん、それから二村がセットになってるって貴重なことだからな。


二村はよっぽど余裕がなかったのか、声を低めて


「昨日、どれだけ電話したと思ったか。


みゆき、雷ダメだったろ」





みゆき―――




確かに瑞野さんの名前は”みゆき”だが、呼び捨てにする間柄だったってことは、やはり二人は何らかの関係があるだろうし、瑞野さんが雷が苦手だって言うことも知ってるし電話もした、その深さは相当なものを物語っている。


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