Fahrenheit -華氏- Ⅲ

今頃台風は東北や北海道に向かっているのだろうか、と考えながら水たまりに足をとられないように慎重に歩いてコンビニまで到着する…つもりが、よそ見していたのか或は寝不足でふらついていたのか、大きな水たまりに足を取られた。


「ぅわ!アルマーニのスーツがぁ(泣)」


そう言えば今日瑞野さんと彼女のお母さんと食事だったよな…


泥は跳ねてないように見えるけど、染みになったらヤバいな。


なんてことを考えながら、コンビニで俺はおにぎり三つとヨーグルトと……


「これは欠かせねぇな」


ドリンク剤を買った。


会社に戻り、早速おにぎりを食うと、空腹に一気に飯を詰め込んだからか今度は急激な睡魔に襲われた。


いつの間にかうつらうつらしていたに違いない。


俺はデスクの上で突っ伏して眠っていたようで、


トンっ


小さな音で目が覚めた。


目を開けると目の前に俺が買ったものと違う種類のドリンク剤が置かれていて、


「え?」寝起きのぼんやりした目を何とかしばたたかせると





「お疲れの様ですね」





瑠華―――……?


「大丈夫ですか、部長。昨日会社に泊まったって…」


「何だ…」


佐々木かよっっ!


てか俺!


瑠華(女)と佐々木(オトコ)の声を間違えるとか!マジでありえねー!


相当疲れていたに違いない。


俺は思わず未だ空席になっている瑠華のデスクを見て


「お前随分早いな、柏木さんより早く出社とか」


てか、昨日”会社に泊まる”メールをした後、何にも返信がなかったからな……


何かあったのだろうか…


「あれ?柏木さん今日は外回りで直行とか言ってたじゃないですか」


へ?直行?


慌ててホワイトボードを見ると


11/18 柏木:直行


となっていて、


「部長にも報告してましたけど?柏木さん。


忘れちゃったんですか」


忘れて―――た。


完っっ全に!


< 430 / 608 >

この作品をシェア

pagetop