Fahrenheit -華氏- Ⅲ

それから間もなくして瑠華と佐々木に昼休憩に入ってもらった。


隙を見て……俺は裕二から受け取ったUSBの内容を開いた。


いくつかのフォルダがあり、ファイルを展開していっても黒い画面にわけも分からない数字と英字、記号の羅列ばかりで俺にはさっぱり意味が分かんねぇ。


諦めて裕二に内線電話をした。


『はい、システム課の麻野です』


とクソ真面目な返事を聞いて


「あ、俺。さっきの何?開いたけど意味分かんねぇ」


『え?開いたのか?エッチ♡』


「ふざけんな、どう言う意味だよ」


『意味なんてお前は知らなくていいんだよ』とさっきのフザケタ言葉とはガラリと変えて裕二は声を低めた。


けれどこんな真剣な裕二にビビる俺ではない。


「知りたいからこうやって電話してんだろ、これが柏木さんとどう関係があるってんだ」


苛々しながら指でトントンとテーブルを叩いているときだった。


ふと気配を感じて顔を上げると、瑠華が戻ってきた。


驚き過ぎて、とっさに受話器を置いちまった。


「ど、どうした?忘れもの?」


不自然過ぎる程にどもりながら聞くと


瑠華はバッグの中をまさぐり財布を取り出し


「お財布を」と言い、「いつの間にかチャージが切れていたようで、恥ずかしかったです」と瑠華は無表情に社員IDカードをかざし、


瑠華……


ぜんっぜん恥ずかしいとか思ってないだろ…


「たまには佐々木に奢ってもらえば良かったじゃん」


「あまり借りをつくりたくありませんので」


相変わらずだな。


瑠華は財布を持って、出ていった。


今度こそ裕二に……と電話に手を伸ばしかけて、やめた。


あいつも詳しいこと教えてくれなさそうにないし。


それに、ここまで来て何故か聞いてはいけない気になった。


まぁ、俺だって暇じゃないからな。分からないことに時間を割いてる場合じゃない。要はこれを瑠華のPCに差し込めばいいんだろ?


だけど、怪しまれないかな。


記憶にないUSBがささってたらさすがに訝しむよな…


仕方ない。瑠華が帰ってからこっそり差し込むか。


裕二曰く電源を落としておいても意味があるみたいな言い方だったし。


それよりも……


今日、瑞野さんと瑞野さんのお母さんとディナーだ。


俺にはそっちの方が問題視することだ。


さっき瑞野さんからプライベート用の携帯にメールが入ってきた。


彼女は母親と先にお店に向かう、と言う。そして店のURLも添付されていた。


「はぁ…」


ため息がもれた。


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