Fahrenheit -華氏- Ⅲ
大体、裕二が何で瑠華と関わり合ってるって言うんだよ。
だけど……
今日の裕二はどこか変だった。
瑠華のことをやたらと気にしている様子だったし。
そう言えば匿名のメールが来たとか何とか言ってたような……
閉じた携帯を見下ろしていると
「あの……遅かったので具合を悪くされてるのかな…って」
瑞野さんが控えめに言ってきて
「いや、大丈夫。ちょっとしたトラブルみたいなもん。気にしないで、食事の続きを楽しもう」
俺は極力何でもない様子を装い、瑞野さんに笑いかけた。瑞野さんはどこかほっとしたようだった。
二人で席に戻ると、俺は鞄が入れられている藤のカゴに軽くつまづいた。注意散漫だったに違いない。
本当に、軽く―――……
しかし鞄の蓋が空いていたのか、傾いた鞄から一つのクリアファイルがちょっと飛び出ていた。
ズボラな性格を呪いながら、そのクリアファイルを戻そうとして、ふと手が止まった。
クリアファイルに収められた用紙の端に”稟議書”と言うものを見たからだ。
稟議書なんて普段持ち歩かない。
いくつかの書類に混じってそのファイルが出てきたのは―――不運なのか、幸運なのか。
20XX年11月18日
桂林、紫玉リゾート開発のオークション参加書
と書かれた文字を見て、俺は目を開いた。