Fahrenheit -華氏- Ⅲ

靴を脱いで歩こう。


♥Ruka♥


オークションを開始してから10分、あたしが偽で出した品に数々の富豪たちがどんどん値を釣り上げていった。締め切り時間は40分。残り30分だ。


「Come on.(出てきなさい)」


ヴァレンタイン


デスクに肘を付き、モニターを睨みつける。


しかしヴァレンタインから未だ入札がない。


しばらく様子を見るつもりでどんどん吊り上がっていく数字を眺めていた。


今はアラブの小国の富豪が$273.473(日本円で言うと3千万円)と値がついている。


その一分、また一分と価格は吊り上がって行く。


香港の富豪が$428,385(日本円で4700万)と吊り上がったところ―――




$911,457(日本円で大よそ1臆)



と言う価格で吊り上げた富豪がいた。


あたしの握ったマウスに力が籠るのが分かった。





「罠にかかった―――



来たわね」


ヴァレンタイン



『あたしがちょっと刺激したの、あいつに。『Are you going to lose to Ruka again?(また瑠華に負けるつもり?)』って。あいつは負けず嫌いだからね』


スピーカーにした心音の声がいつになく妖艶に聞こえる。


「Thanks.」


小さく返し、しかしあたしはその上の$1,367,185(日本円でおおよそ1臆5千万)を出した。


『大きく勝負に出たものね』


同じくこのセリを見ている心音がスピーカー越しに『ヒュ~』と口笛を吹いた。


「言ったでしょう?あたしは負けると分かっている勝負には挑まないって」


モニターを睨んでいると、思惑通り相手は$1,595,049(日本円で1臆7千五百万)と言う値を付けてきた。


『餌に食いついてきたわね』心音が低く嗤う。『このまま一気に吊り上げるわよ』


「ええ、ここからはあたしと向こうの一騎打ち」


『折りを見て降りてよ?じゃないとあんたがただじゃ済まないわ』


「分かってるわよ。でも誰よりも彼の性格を知ってるから、そこのとこは大丈夫よ。


で?そっちはどうなの?麻野さんの守備は。うまく妨害できてる?」


『なかなかなものね。でも、しつこい男は嫌われるわよ?』心音は軽口を聞きながらもキーボードを叩く音が聞こえてきた。


どこか愉しそうなのは気のせい??


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