Fahrenheit -華氏- Ⅲ
だけどどうすればいい?
瑠華をPCから引きはがす?いや、一歩間違えれば彼女に怪我を負わせかねない。
秒の単位で視線をぐるぐる回すと、それは以前瑠華の引き出しで俺が見つけた、ベリー色のUSBが差し込み口に差さっていて
これか!!?
判断する間もなかった。
殆ど本能でそのUSBを引き抜くと、ブンっ……と小さく音が鳴り、瑠華のモニターが黒くなった。
瑠華は目の前の黒いモニターを放心したように見つめている。
やった――――……?
俺が目を開いて手の中のUSBを眺めていると、またもパっと画面が切り替わった。
くっそ!これじゃなかったんかよ!
だけど
『ウィルスバリアが解けた!』裕二が言い、俺は再び目を開いた。
良し!後は神頼み、いや裕二頼みだ!
そう願う暇も無く、ブンっ……とまたも静かな機械音がして、再びモニターがブラックアウトした。
瑠華はモニターを見つめながら放心している。
間に―――……合った…?
「ほぉっ」
思わぬ大きなため息が出た。今まで緊張状態が続いていたからか、俺は思わずデスクに腕を付きながらその場に膝を付き崩れ落ちた。
瑠華は再び大きく目を開いている。
「………間に合った……
裕二、サンキュ。偽のオークションを止めることができた」
『はぁ……良かった……お前のファインプレーだな。バリアを破ってくれたおかげだ』
「何で……」
瑠華は眉を寄せて俺を見下ろしている。悲しみのような寂しさのような……或は諦めなのか。その瞳は黒く濁っていた。
『Dammit! That was close!(何よ!あと一歩だったのに!)』スピーカーにした携帯の向こう側で心音ちゃんが怒鳴っている。
「どうして!」
瑠華は俺に向かって怒鳴り声を上げた。
こんな風に―――瑠華が俺に怒鳴るのは殆ど初めてだ。
「あと一歩だったのよ!」
ぎりぎり……とデスクの上で握った手に力が籠っているようだった。
俺がのろのろと顔を上げ
「じゃぁ俺も言うが!!君たちのやろうとしたこと、やったことは場合に寄っては会社にとって大損害をもたらすところだった!
それだけならいい!違法行為にもなるんだぞ!」
今度は俺が怒鳴った。
こんな風に怒鳴りたくなかったよ。
別れてから、少しずつ穏やかに時を過ごし、やがて彼女と元通りになれたら……
と思っていたが、全て水の泡だ。
原因を作ったのは瑠華からもしれない。けれど、瑠華の言葉に怒鳴り返すべきではなかった。
ちゃんと彼女の意見を聞くべきだった。