Fahrenheit -華氏- Ⅲ
思い過ごしか?
いや、絶対何かある筈。
俺はしつこいぐらいあちこちを手で探った。あちこちに視線を巡らせた。
ふと瑠華のデスクに向かい合っている佐々木のデスクに目が向いた。
PCの……こちらから向かって背後になるだろうか、その場所にきらりと光る何かを見つけた。
何だ?
佐々木のPCモニターの影に隠れるように光るものに手を伸ばし、それを手に取ると
スマホ―――?
どうやらスマホの角が部屋の明かりに反射したようだ。
そのスマホの画面を覗き込むと、録画が回されていて未だその画面は俺が動かすと、その場面が鮮明に映し出されていた。
録画を切り、すぐさま削除しようにも当然ながらロックが掛かっていて、削除しようにも出来ない。
くそっ!
どうすればいい?
あれこれ考えて、俺はスマホの薄い側面をあちこち触れた。
どっかにある筈だ。
と思っている内に俺の探しているものが見つかった。
マイクロSDカード。
俺はそれを取り出した。
「案外、アナログな所が穴なんだよ、二村。
詰めが甘かったな」
俺はマイクロSDカードを宙にかざし、それを手のひらに包みこんだ。
このまま―――俺が軽く力を入れればマイクロSDカードは粉々だ。
けれど―――この”証拠”を握りつぶした所で、あいつは”器物損害”とかで訴えるに違いない。
くっそ……
結局、マイクロSDカードを手にしても何もできない俺。
何か……何か手がないのか。
少しの間考えて、ぴんと来た。
俺は通話を切ったばかりの裕二に電話を掛け直した。
「裕二!俺」
『おうよ、さっきの礼は…』
「もう一つ頼まれてくれ」
『はぁ?俺はもうくたくたなんだよ。頭と手が痛い』裕二は心底うんざりしたようにため息をつく。
「頼む!」
俺が勢い込むと、裕二はため息をつき
『今度は何をすれば?』