Fahrenheit -華氏- Ⅲ
俺はバカの一つ覚えに『ごめん』を繰り出した。
けれど最後の『ごめん』は―――
抱きしめさせて?こんな振り回すことして
「ごめん」
謝罪の言葉と同時に俺は本能で瑠華を抱きしめていた。
俺の胸の中にすっぽり収まる瑠華は記憶に濃い。少し力を入れると折れそうな華奢な肩。柔らかい肌。
ドキン、ドキン…
ヤバい、俺心臓の音凄い。
今まで何度も瑠華を抱きしめた。けれどここまで緊張したことはなかった。
激しく打つ鼓動を押さえようと何とか試みるも、無駄だった。
俺たちの距離は今―――ゼロセンチ。
このまま瑠華を壊れるまで抱きしめて、永遠に俺だけのものにしたかった。
瑠華の柔らかい髪が俺の手の甲を滑る。瑞々しい華の香り。
離したく―――ないよ。
けれど
瑠華の方からやや強引に身を剥がした。
離れて行かないで、と思うとほぼ同時。
ドンっ!
瑠華の腕が伸びてきて、彼女の手が壁をついた。
え!!?
これって俗に言う”壁ドン”てヤツ!?
きゅんっ
してる場合じゃねぇって。
瑠華は温度の感じられない冷え切った目で俺を見上げてきて
「本当に、あなたには迷惑しています」
と一言。
その冷え切った視線に、俺の心も急速に冷めていくのが分かった。