Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「は―――?」
意味が分からず尋ねると
「いや、いい!今の気にしないで!」
「そうは言われましても」
「いいから!気にしないでって!」
葵さんの背けた横顔はほんのり赤く染まっていた。
何が言いたいのだろう。
―――とりあえず、あたしの為にわざわざドラッグストアに足を運んでくれたのは感謝だ。
「流石に腹減った~、瑠華ちゃんは?」
といつもの調子に戻って聞かれ、何だか色々気が抜けた。
あたしもさすがにおなかがすいた。今まで緊張状態が続いていたのだ。
その緊張の糸が切れた途端、ふっと空腹が思い出したかのようにやってきた。
この時間帯、居酒屋も24時間営業のファミレスも開いている状態。
一人で家で済ませるのもいいけれど、買って帰るのも億劫だ。
一人になりたかった―――
けれど、今は独りでいたくない。
「何か食べます?」
あたしが提案すると、葵さんはジーンズのポケットに手を突っ込みながら
「うん♪」とまるで子犬のように大きく頷いた。
とは言うものの、居酒屋やファミレス―――…と言うのは意味もなくだらだらしそうでイヤだったし、
ふと目についた世界共通のおなじみのロゴ。
黄色く光る”M”の字を見て、あたしは目を細めた。いえ、睨みつけた。
マックス――――