Fahrenheit -華氏- Ⅲ


「ねね、外国のマックってハンバーガーがでかいってホント?」


と聞かれ、あたしはポテトを口に含みながら、


「サイズは全世界共通です。ただ向こうはラージサイズが多いですけど。バーガーは小さいサイズもありますがこのポテトやドリンクは向こうが圧倒的に大きいですね」


「へぇー…俺日本出たことないから分かんなくってさー、瑠華ちゃんは?どこの国に行った?」


「どこの国……、イギリス、モナコ、シンガポール、ベトナム、グアム、カナダ…」


あたしは指折り数えた。


「すっげぇ」


まだ言い切ってないけど。


「さっきから思うのですが何が凄いのですか?」目を細めると


「だってー、俺の知らないことできないこといっぱい知ってたりしてたりしてるじゃん?」


ああ、彼の言う『凄い』と言うのは尊敬の意ではなく、ただ単に物珍しいだけなのだ。


「大したことはありません、私用と仕事両方ですので」


「あー、貿易関係って言ってたもんね?」


「ええ」


嘘は言っていない。ただ、出向いた国の半分は完全なるプライベート、ヴァレンタイン家のイベントで出向いた(歓迎された)だけだから。


「なんかかっこいいな~」


葵さんは食べかけのハンバーガーを手に、うっとりと宙を見上げる。


「何がかっこいいのですか。私は面倒でしたよ。時差ボケに悩まされ、現地の食事が身体に合わなかったことも多々…、特にユー…」


言いかけて慌てて言葉を飲み込むようにハンバーガーにかじりついた。


「ユー?」


『ユーリを連れての旅行は大変だった』と言いかけそうになったのを何とか止めることができた。


「ユーロ換算が苦手だったので、旅先での支払いは殆どクレジットカード払いが多かったと言うことです。クレジット払いは嫌いでしたけどやむを得ず」


「へー」葵さんは何を納得したのか大きく頷いている。


あたしの苦しい言い訳もあまり気にした様子がなかったことにちょっとほっとした。

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