Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ハンバーガーを殆ど食べ終えた頃、隣のテーブルに女子大生らしい二人組が同じくハンバーガーセットの乗ったトレイを手に席に着いた。
「これ、超!良かったね~!」
手には映画のパンフレットのようなものを持っていた。
「あたし、まだ涙が止まんない」と一人はハンカチで目元を拭っている。
その様子を見て葵さんが内緒話をするかのように口元に手を当てこそっと話しかけてきた。
「あ、あの映画…今すっげぇ話題だよね。俺も観たかったんだ~、ねね、瑠華ちゃん一緒に…」
「行きません」
またもあっさり言うと
「またも瞬殺かよ」
と葵さんはさめざめと泣き真似。
それでもめげずに
「行こうよ~、すっげぇ泣けるらしいよ?」
葵さんの言葉に、ちらりと女の子たちの方を見やる。パンフレットには若い男女が手を握り合って見つめあっていた。
恋愛……それも純愛ものか…
なら、尚更観る気がしない。
残りのポテトフライに手を伸ばしていると
「あたし、初めて”本当の愛”って知った気がする」
と、女の子の一人が言って、その言葉がやけに耳に大きく入ってきた。
「自分を犠牲にしてまで相手を守るって早々できないよね」
もう一人の子が答える。
自分を犠牲にしてまで、相手を―――守る。
あたしのポテトフライをつまむ手が止まったのを見てか、葵さんが頬杖をついて斜め上から問いかけてきた。
「思ったんだけどさ、瑠華ちゃんが別れたオトコって
あの外国人じゃなくて、さっきのオトコ?」
唐突に聞かれ、あたしは目だけを上げた。