Fahrenheit -華氏- Ⅲ


薄暗い映画館の場内は人がぽつりぽつりと居るぐらいだった。


一人で来ている大学生っぽい人や仕事終わりの人、若いカップルらしき二人組。


レイトショーもこれで最後の上映時間だ。


あたしは指定された座席に腰を下ろした。


当然ながら周りは誰も居ない。後ろの方の座席でスクリーンから向かってやや右側。


上映開始時間10分前になって場内が更に薄暗くなると映画の予告が流れ始めた。


話題のハリウッド映画のアクション映画、韓国映画の恋愛映画、そして高校が舞台のコメディ邦画。


どれも興味をそそられなかった。


それらをぼんやりと流して見ていると、放映時間ギリギリのタイミングで出入り口の重い扉が開閉する音が聞こえてきた。


滑り込みで観に来たのだろうか。


さっきのマクドナルドで隣の女の子たちが噂していた通り、評判がいいようだ。


そして映画は始まった。


約二時間半。


物語(ストーリー)は、私立の高校が舞台だった。


『泣ける』と言うからには純愛で始まるかと思いきや、意外な出だしで主人公の一人、女子高生の親友が自殺未遂を図ると言う所から始まった。自殺を図った彼女が最後に呟いた言葉は彼女が通う高校の教師だった。


教師に想いを寄せ、それに敗れたから自殺を図ったのだと思う主人公。


その復讐を果たす為、彼女は自らその教師が在籍する高校へ進学する。


若い男性教師は自殺を図った親友を陥れた人物像とはかけ離れていた。真面目で誠実、生徒や教師からも人気が高い。


最初は復讐の為に近づいた。同じように自分に振り向かせて死にたいぐらいの痛手を負わせてやろう、そして教員と言う立場から引きずり落としてやろう、と思っていたのに、やがて彼女は純粋で優しい教師に心を許し、惹かれていく。


憎い敵なのに、それでも惹かれていく自分との葛藤。


そして教師も悩んでいることを知る。自殺を図った親友のことを本当に気に掛け、意識不明のまま入院した彼女の病院に頻繁に訪れていることを知り、主人公の女子高生は混乱する。


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