Fahrenheit -華氏- Ⅲ
俺が作った料理も殆ど食い終わり、裕二が帰ると言い出した。
「タクシー呼ぶか?この辺あんま通ってないんだよな」俺が携帯を手にすると
「いや、まだ明るいし電車で帰るわ」
「そ?んじゃ駅まで送る」と言い出すと、裕二は気持ち悪いものを見るように露骨に顔をしかめた。「お前な~、幾ら頼まれ事引き受けたからって気持ちわりぃんだよ」
「変な意味じゃねぇよ。ビール切れたから俺も駅前のスーパー行きたいの」
と言うわけで裕二と高輪台駅に向かっている最中、裕二が
「あーあ、なっんで休日に野郎と二人で歩いてンの俺」がくりと肩を落とし口を尖らせる。
「綾子は?出張?な筈ないよな。親父も今日はオフっぽかったし」
俺だって野郎と二人きりとかはイヤだね、と言葉はしまっておいた。何せ裕二に頼み事をしている身分だ。変なことを言ってへそを曲げられても困る。
「綾子はトモダチとおデート」裕二は若干つまらなさそうに顔を上げ
「友達?あいつってダチいんの?」俺の質問に裕二がキっと眉を吊り上げた。
「ダチぐらいいるわ!」
お前……自分のことのように怒るなよ。てかダチって桐島??
「あー…そいやぁこないだ女子会したって言ってたよな。あのメンバー?(※FahrenheitⅡ参照)
でもあいつの性格からして、その女子会メンバーとしばらく距離置きそうだけど、女の友情ってわっかんねーな」
「ちげーって、あのメンバーじゃない」
『じゃぁ誰?』とは聞かなかった。綾子の交友関係に興味がない。
けれど
「会ってんのは
柏木さん」
は――――?