Fahrenheit -華氏- Ⅲ
秋の夕暮、傾きかけた陽の光が俺たちの影を長く伸ばしていた。
「何で……」
一つの影…俺の方のがゆらりと揺らめいた。
「俺が頼んだの、綾子に」
「何で?」
またも俺は同じ質問を繰り出した。バカの一つ覚えのように。
「さっきも言ったろ?昨日の柏木さん普通じゃなかったって。
追い詰められてる気がして、ちょっと心配だったから様子を見に行って貰えるよう言っておいた」
裕二……
俺は目を潤ませて裕二を見つめた。
裕二はまたも気味の悪いものを見る目つきで
「わかったから!抱き付くなよ!」と思いっきり腰を引いた。
「安心しろ、俺だってそんな気持ち悪いことはしない」
軽く手をあげ顔を逸らすと
「なーんか、お前って腹立つヤツだな」と裕二がまたも目を吊り上げる。
「悪い悪い」俺はへらへらと笑った。
裕二……前は瑠華のこと嫌ってた…と言うか苦手意識全開だったのに、瑠華に助けられて、そんな裕二も瑠華を助けたいと思って……
俺と瑠華がこんな関係じゃなかったら、俺たち今頃みんなで笑ってたんだろうか―――