Fahrenheit -華氏- Ⅲ
二村、舐め腐った真似しやがって!
瑞野さんを使ってSDカードの行方を探させようとしているんだ、あいつは。
ぎりり、と握った拳に力が入った。
それと同時にはっとなった。
瑠華……
あの二村のスマホのSDカードを俺と瑠華どちらが持ち去ったか二村は知らない筈。
瑠華!
「綾子!」
俺はまだ繋いだままの電話に怒鳴った。
『な、何よ…』綾子がたじろぐ。
「瑠華に家族や友人以外から電話があったら取り次ぐな、と言ってくれ。お前、今瑠華と一緒にいるんだろ?」
『え、ええ……一緒だけど』と綾子が声を潜める。
どうやら場所を変えようとしているらしい。
「綾子、今日裕二のマンション行くんだろ?」
『そうだけど…何で知ってるの?裕二から聞いた?』
「ああ、細かいことは今言えない、悪いけど裕二との約束遅くしてくれ。今はまだ瑠華と居てくれないか?」
俺がせっかちに言うと
『はぁ?何でよ』と綾子は不服顔を浮かべているのだろう、声を低めた。『もうそろそろ帰ろうと思ってたのに』と付け加えて。
「悪いと思ってる。でも緊急事態なんだ。瑠華が危険かもしれない」
俺の場合は瑞野さんが来たが、瑠華の所にには―――……?
誰を仕向けるのか俺には皆目見当もつかない。
よっぽど俺が真剣だったのが伝わったのか綾子は小さくため息をつき
『分かったわ、今は彼女と一緒にいる』と承諾してくれた。
ほぉっとため息をつき
「じゃ、俺は急用があるから電話切るよ。また後で電話する」
『ちょっ、ちょっと待ってよ!急用って瑞野さんが関係してるの?』
「詳しくは後で話す。今は急いでるんだ」
一晩―――…いや、三時間程でいい。
それだけあれば、二村は瑠華に牙を向くことはない。
不本意だが、ここは瑞野さんを家に迎え入れるしかない。