Fahrenheit -華氏- Ⅲ
どこか外なのだろうか、住宅街と思われる背景の手前に驚いた様子の二村が映っている。どこか見覚えのある風景だ。
「どーもー、神流 啓人くんのお部屋で~す♪」
俺はわざとチャラけてまだ驚きを隠せず何も言えずにいる二村に挑発的に笑いかけて手も振ってやった。
「お前らの目的は分かってんぜ?”愛しの”瑞野さんを向かわせてまで欲しかったものって”これ”だろ?」
俺は瑞野さんに向けたSDカードを同じように二村にも見せてみせた。
「ちょっ!何するんですか、勝手に!」
と瑞野さんがスマホを取り返そうと手を伸ばしてきたが、それよりも俺は早く立ち上がった。
瑞野さんが立っても届かない位置だ。
「”勝手に”はこっちの台詞だ?わざわざ盗み撮りまでして柏木さんを陥れようとしたんだぜ?しかも今回はスパイまがいみたいなことまでしやがって」
瑞野さんにニヤリと笑いかけると彼女は目を開きまたも顔を青くさせた。
「それは……」
「正直、君がどこまで関わってるのか分からない。”今回の件”は君も知らなかったことかもしれないけど、二村に頼まれてSDカードを取り戻そうとしたってことはもう立派は共犯者だ?」
俺はわざと”共犯者”と言うワードを強調させて言うと、瑞野さんは俺を睨み上げたまま下唇を噛んだ。
『やめろ、みゆきは関係ない。何も知らなかった』
と、ここで初めて二村の声を聞いた。
”みゆき”か―――
呼び捨てにする程まで余裕がないと見える。
よし!こっちの立場が上回っている。この流れに乗って一気に叩き込んでやる。
「知らなかったかもしれねぇが、このSDカードを取り戻そうとして瑞野さんを利用したお前が悪いぜ?
俺だったら
好きな女を、他の男の元に送り込んだりしない。
瑞野さんがどうなっても俺は責任取らないからな?
この”SDカード”のように」
『やめろ!』
二村の叫び声が聞こえた。
さっきは怒って俺を見上げていた瑞野さんがすでに怯えの色を浮かべた顔色で、そんな彼女を見下ろし
SDカードを指と指の腹で
バキィっ
と真っぷったつに折ってやった。