Fahrenheit -華氏- Ⅲ


何故、このタイミングで瑠華の名が?





「瑠……柏木さんは―――


確かに『流されて~』とか部分はないと思う。


そう言う意味では強いかもしれないけど、


脆い部分もあるよ」




俺は両手でカップを包みこみまだ俯いている瑞野さんにそっと言った。


瑞野さんがゆっくりと顔を上げる。


「人間は誰しも強いだけじゃない。脆い部分もある、弱い部分もある。


俺だってそうだ。


押しつぶされそうなときもたくさんある」


「部長も―――?」


瑞野さんが大きな目をぱちぱちさせ物珍しそうにまばたく。


「そらそーさ~、俺なんてダメダメジュニアだからね」アハハ!と俺はわざと明るく笑ってみせた。


瑞野さんはちょっと安心したように、ふっと口元に手を当て笑った。


「あ、そこ否定してよ」


「ふふっ」


瑞野さんは今度は声に出して笑った。そしてこうも付け加えた。





「部長はダメダメなんかじゃないですよ。


だってこんなにも




優しい」




瑞野さんの、まだ涙に潤んだ瞳に俺の顔がゆらゆらと映っている。


俺は自然、瑞野さんの頭に手を近づけた。


―――、ところで慌てて手を引込めた。


「二村と約束したしな。頭ぽんぽんでも触ったことになるし」


ふいと顏を逸らそうとすると、俺の手に瑞野さんの手が置かれた。





「―――してください。



頭―――ぽんぽん……




落ち着きます」




え――――……?


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