Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ピンポーン、ピンポーン!
程なくして今度は部屋のインターホンが鳴り、
「うっせぇな!」俺は怒鳴りながら扉を開けた。
そんな不機嫌な俺をスルー……と言うか目に入っていないのか二村は俺の横をすり抜けると慌てて靴を脱ぎ
「みゆきっ!」と叫びながら勝手に玄関に上がった。
おい!いい加減に…
と怒鳴り出そうとしたときだった。
「いい加減にして、二村くん!」
リビングに居た筈の瑞野さんが、今まで見たこともない怒りの表情を浮かべて怒鳴った。
俺も―――二村も、びくりと肩を揺らした。
「非常識にも程があるよ!ここは部長の家だよ!
それに……
二村くんが何を考えてるのか分からないけど、いい加減あたしを二村くんの事情に巻き込まないで!」
瑞野さんはそう怒鳴った。
まだ開きかけていた扉から近所の住人だろうか、ちらりとこちらを覗く人影が見えて俺は慌てて扉を閉めた。
つか”ここ”で痴話げんかとかやめてくれよ。
俺は額に手を置きながら
「瑞野さん、とりあえず落ち着こう……」と宥めようとするも
「あんたは黙っててください」と二村が俺を睨む。
”あんた”だと!?
「お前に”あんた”呼ばわりされる筋合いはねぇわ!」
雰囲気に呑まれて思わず俺も声を荒げた。
場が一瞬しんとなる。
はっ!
てか何やってんの、俺。
冷静になれ俺。
「瑞野さん、俺に何かされた?」と目を細めて瑞野さんを見据えると、瑞野さんは肩を縮ませてぶるぶると顔を横に振った。
「って言うことだ。俺は約束したことは守るたちでね。彼女には指一本触れてない。
つーわけで、さっき撮った画像は今この場で削除しろ。
そんでお前は瑞野さんを連れて今すぐ出ていってくれ。近所迷惑だ」
スマホを寄越すよう二村に手を向けると、二村はギリリと歯軋りしながらも、渋々と言った感じでスマホを俺に手渡してきた。