Fahrenheit -華氏- Ⅲ
問題のスマホを奪うと、用意がいいのかどうかその画像はすぐに現れた。
迷うことなく『削除』ボタンをタップすると画像は完全に削除された。
「ったく、面倒かけやがって」
二村にスマホを放りなげると、危うい手つきで二村はそれをキャッチ。
「元々あんたがSDカードを盗まなきゃ問題なかったんじゃないか」二村が目を吊り上げる。
「”元々”お前が盗撮しなければこんなことにはならなかった」
皮肉を込めて負けじと言い返し、ふんと鼻息を吐くと二村は顎を引いた。
「じゃぁ言わさせてもらいますが”元々”柏木さんが怪し気な取り引きさえしなきゃ…」
「”元々”その稟議を盗ませたのはどこの誰かさんかな?」
俺は腕を組み瑞野さんの方を顎でしゃくると、瑞野さんがビクリと肩を震わせた。
二村がここにきて初めてたじろいだ。目を開いて一歩後退する。
ここにきて、思わぬリードを得たような気がするが気を緩めるわけにはいかない。
「安心しな。確たる証拠なんて何一つない。
まぁ?状況証拠なら揃ってるけどな」
「あの……あたし……」
瑞野さんが再びバッグを抱きしめながら顔を青ざめさせる。
「物的証拠なんて何一つないんでしょう?あくまで状況証拠だ」
二村が顔を引きつらせて何とか笑う。
「お前の言った通り状況証拠だ?でも俺はお前が稟議を手に入れた経緯の想像はついている」
俺はわざと二村ではなく瑞野さんを見ると瑞野さんは、またもビクリと肩を震わせて俯く。
「みゆきは関係ない」
二村が顎を引きながら目を吊り上がらさせ唸る様に低く言った。
どうした二村。
いつもなら笑って交わすはずが、今はムキになっているようにしか見えない。
認めたようなものじゃないか。
「ふっ」
俺は低く笑って、二村を見据えると
「風向きが変わったな、二村。
ツーペアだ」
二村に二本の指を突きだした。二村がしきりに目をまばたく。
「まだまだカードが足りないが、俺は必ず揃えてみせる」