Fahrenheit -華氏- Ⅲ
これは宣戦布告と言うのか。
「何が言いたい…」と二村が言いかけたが
「話は終わりだ。近所迷惑だから二人とも帰ってくれ」
俺は二村と瑞野さんを見て、次いで玄関口を顎でしゃくると、瑞野さんは深く項垂れたまま大人しく玄関口に向かった。
無言で俺の横を通り過ぎる。
二村もその様子を見守りながら
「……みゆき…」と一言呟きながら、慌てて瑞野さんの後を追っていった。
パタン…
扉が完全に閉まると
「はぁ……」
ズルズル……
俺はその場で思わず尻をついて座り込んだ。
両手で顔を覆い
「やってらんねーよ」
思わず本音が漏れる。
でも
これで―――
二村の攻撃先が完全に俺に向いた。
そう思ったら息が抜けた。が、そうのほほんとしてるわけにはいかない。
俺は慌てて携帯を取りにリビングに戻った。
リビングのラグには俺が砕いたSDカードの破片が粉々に散らばっていて、しゃがみ込みながらその一欠片を手にして
「あーあ、コーヒーも染みになっちまったし、このラグ買い換えなきゃ、だな。結構気に入ってたのに。高かったし…」
トホホ…
でも、どんな高級なラグをダメにしたって瑠華を取り戻せるのなら、
安いもんだ。